I left my heart in SanFrancisco 2

「どうしよ〜!荷物サンフランシスコに着いちゃったって!」
「よし!ならもう出発しようよ。どうせサンフランシスコにいこうと思ってたんだから、空港で荷物をピックアップしてそれから観光にまわろう!」
持つべきものは友達である。  早速 2人荷物をまとめてサンフランシスコのホテルを予約し、車に乗り込んだ、日産のピカピカの新車だった。 かなりのでかさ・・たぶんローレルだったと思うけど日本で売られているより一回りでかい気がする。
わたしの友達は日本では大柄なほうだけど、それでも充分な広さだ。  わたしといえば いすにしずんでしまい、高さを調節するのに苦労をした。 日本車はアメリカではやはり輸入車なのでかなり高額、でも安全性を考えればぜったい日本車にしか乗りたくないと彼女は言ってました。
サンノゼからサンフランシスコへステートハイウエイ101を走る、サンフランシスコまでは1時間程度の距離、大抵の車にはオートクルーズが装備されていて、ハンドルのところのスウィッチで速度を固定したり上げたり下げたりできる。フリーウエイを走行しているときなどは非常に便利。逆に無いと困るし疲れる。
アクセルは勝手にがんがん動くし、坂道などでちょっとでも速度が落ちようものならすぐにアクセルが入る。
「朝飯前の腹ペコ前の快適ドライブ」・・・のはずだった。
3日間の足止め最中に行った、恐怖の館ウィンチェスター館の呪いか・・急に腹部に激痛が〜。
やっぱり昨日のメキシカンの食べすぎだろ〜か!
「お願い〜! トイレ!」
「え〜っ こんな高速でトイレなんてないよ〜」
「お願いッ! 降りてどっかとまって〜!」 
もう脂汗だらだらの極限状態である。  ルート101をとりあえず降り、近くのガソリンスタンド脇にちいさなハンバーガーショップを見つけて車を止めてもらった。 ドアを開けたとたん、友達と顔を見合わせた。 ちょっとやばいエリアだったみたい。
ヘルスエンジェルス風おにいさんたちが、おおきなハンバーガーを黒ビールで流し込んでいるとこでした。
思わず恐怖で便意が・・・なくなるわけがない!
ハンバーガーを焼いているカウンターにはなぜかガラスの仕切りがしてある。 店員さんとお客さんはハンバーガーを渡すために開いているだろうと思われる小窓とレジの前の鉄格子ごしにしかコミュニケーションができないようになっている。
かなりやばいけど、そんなこといってる場合ではない! 
「すみませ〜ん! トイレ貸してくださいっ!」 必死の形相で訴えると、店主はちぇっと舌打ちをして、ウェートレスのおねえさんにあごをしゃくって見せた。 かわいいウェートレスさんは「こっちよ」と手招きして裏の通路に案内してくれた。
大きな冷蔵庫の脇になかなかこぎれいなトイレがあった、ウェートレスさんは鍵束をがちゃがちゃいわしてドアをあけてくれた。
「え〜いつも鍵しめてんの?」「普通、お客さんには貸さないの」
「ありがと〜 助かった〜!」
至福の時間を終え、いざトイレをでようとすると、外から鍵がしまっている!?
「えっ!なんで〜!開けて〜!」 トイレの上には鉄格子がはまっていて、完全なる密室!
ノブをどんなに回しても、ドアを思い切りたたいてもなんの反応もない。
「こんなとこで閉じ込められて殺されちゃうんだろ〜か?」頭はパニック、なんてったってわたしは閉所恐怖症なのである。
新たな脂汗がたらたらまるで鏡の部屋に閉じ込められた「がま」のよう。「ヘ〜ルプ! 出して〜!」何度叫んだろうか。
遠くから足音と鍵束の音が近づいてくる。 じゃりッガチャガチャ・・・「ギャ〜ッ!!」
小さな黒い顔に白い歯が「にっ」っと笑った 「Done?」さっきのウェートレスさんだった。
「なんで鍵しめたの〜?」「だってあなたあぶないでしょ! トイレで襲われたら大変よ。 すぐきてあげようと思ったんだけどお客さんがいっぱい来ちゃって来れなくなっちゃったの。待たせてごめんね。」
この黒人の小柄なウェートレスさんの笑顔はいまでも覚えている、ほんとうに天使のような笑顔だった。
店の中にもどってみると屈強で刺青をいっぱいしたお兄さんの間で友達が青い顔をしてコーヒーをすすっていた。
悪夢はさらにつづく・・・