I Love Riceball!

mmin2004-08-23

上海からきたお客人にはもうひとりかわいいお供が付いてきていた。 彼女の息子のジョージくんである。
ジョージくんは、11歳 夏休み中の上 お父さんも台湾に出張中なのでおかあさんのお仕事に同行して初めての来日。
海外出張でも子供を連れてこなければいけないんだぁ。 わたしも何度も子連れ出張したなぁ・・・
ううう〜(泣)・・・ レベルは天と地ほども違うけど、身につまされる。  
どこの国でも働く女の人はきびしい条件のなかでがんばっている。
 
「ひとりでホテルで待っているなんて退屈じゃない?」と聞いたら
「ボク、どうしても食べたいものがあるんだけど」
「なに?」  
「おすしを海草で包んだもの」
「・・・・・?」
「どうしても今日それを探して食べたいんだ。 売っているところを教えてくれれば買いにいきたいんだけど。」
と口を真一文字に結ぶ。 まるで今日のミッションはこれだ!とでも言うようにこぶしまで握り締めている。

よくよく聞いたら 海草は海苔のこと 最初は巻きずしのことかとおもったけど「おにぎり」のことだった。
「それ、おすしじゃないんだよ。 英語だとライスボールって言うんだ。」
「Oooooh! I Love Riceball!!」
「きのう成田空港に着いたとき、子供が食べているのを見ておかあさんにせがんで買ってもらってたべたら、ほ〜んとにおいしかったんだ!」
「へぇ・・あんなもん、そのへんのコンピニでもどこにでも売ってるよ。」
「え〜 やったぁ (^^v」

ちょっと待てよ・・最近のコンビニおにぎりはたしかにうまい。 でもなぁ あんなのほんとのおにぎりだと思われると日本人としてのプライドが傷づくかも・・

「よっしゃ! つくっちゃる!」
「ほんと?!」
「オフコ〜ス!」(新庄風)

おにぎりはなぜおいしいか? それは「手」で握るからである。
愛情を込めて「気」を入れて「おいしくな〜れ、おいしくな〜れ」と魔法をかける。
「手」で握ったおにぎりは塩だけでも十分おいしい。
コンビニのおにぎりは確かにとっても凝っていて研究されているけど、おのずと込められた愛情の格が違うのだ。
ほんとうのおにぎりを食べさせてあげるからねん!

次の日は、A-ちゃんのお弁当とジョージくんのお弁当を作る。
日本のおにぎりのスタンダードは梅干だけど、ジョージくんはおにぎり初心者だから中身は「焼き鮭ほぐし」にする。
ウインナーと玉子焼きを添えて完璧な日本の子供のお弁当をホテルへ届けてあげた。
「ホテルのとなりに公園があるから、あそこで食べなよ。 浮浪者に横取りされないようにね。」
「Oo! Thank you!」
こんなもんで喜んでもらえるんだったら、いつでもOKだよ。といいながら、本音は「まき寿司」じゃなくてよかったぁ。 おにぎりは「気持ち」である程度握れるけど、まき寿司は「テク」がいるもんね。「ほっ!」

夕方 携帯に電話がはいる。「うちのママに今日のおにぎりのレシピを忘れずに書いてわたして!」
「おにぎりのレシピねぇ・・・」 おにぎりにレシピなんていうごたいそうなもんがあるんだろうか?
とりあえず、ちかくのスーパーにはしり、おにぎり用の海苔と瓶詰めの鮭ほぐしと味塩を買ってもどり、会議室でひとり真剣に仕事をしていたジョージくんのママに渡す、あっけに取られている彼女におにぎりのつくり方を丁寧に書いた紙を渡した。
わたしって海外からのビジターがくるといつもこんな感じ・・仕事以外のことですこぶる忙しくなってしまう。
でも、紙を読んだあとの彼女の顔は、それまでPCを見つめていた厳しい表情とは打って変わったやさしいおかあさんの笑顔だった。 こんな顔をみたいがために必要以上のホストをしてしまうんである。
「愛情と力を込めてご飯を握ること。」レシピの最後に大きく太字で書いてあげた。 彼女と見詰め合ってふたりで思わず笑ってしまった。 なにも言わなくてもお母さん同士の思いが通じ合ったのだ。

ホテルまで彼女を送っていき、ジョージくんとさよならをした。
「又、すぐ日本に来たいんだ。 I love Japan!」
その一言が聞きたかったんだよね。 ありがとう 日本を好きになってくれて。